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† 姫と剣 †
第8章 刺客


はぁ、とため息をつくロイにイーサが肩に手を乗せた。



「今から馬を走らせればまだ間に合うんじゃないか?」



イーサの提案に、ロイの青い瞳が少しだけ輝く。


そして、そのまま返事をすることなく、ロイはルシアに追いつくべく、走り出していた。


弟の背中を見ながら、ウィルがまたハハと笑う。




「すぐにまたローハーグに行くって言うのにねぇ」



かじったサワンから果汁がポタリと地面に落ちる。


そして、何の気なしに感じた張り詰めた空気に、ウィルは珍しく眉を寄せると、砂漠の方に視線を投げた。


同じく、イーサも顔を顰めて腕を組みながら、眼光を鋭くさせている。




「……何か、嫌な予感がするな」



イーサの言葉に、ウィルも目を細める。



「おや…兄上も、ですか?」




2人の目線の先、遥か遠く。


かすかに見える土埃に、ウィルは「ふん…」と息を吐いた。




「やっかいそうだなぁ」



持っていたサワンを最後の一口かじる。


残った種をそのまま、放り投げると、イーサとウィルは、声を掛け合うこともせず同時に振り返り、宮殿に戻っていった。

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