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† 姫と剣 †
第8章 刺客
ルシアの馬車を複数の騎士が囲う。
見送りの護衛に、とロイがつけたアノアの兵も幾人かその中に加わっている。
いつもより固い警備。
無事に帰国できれば、と願う最中、リューイは馬で駆けながら自身の左手奥をじっと見つめた。
「─────……」
耳をすませば、自分たちとは別の馬のかける音と地鳴りが響いているのが分かる。
遠くの土煙。
カッと目を見開いたリューイは、瞬時にルシアの馬車に馬を寄せた。
「……リューイ…?」
再び近づいてきたリューイにルシアは首をかしげる。
たが、リューイの纏うただならぬ雰囲気に少し腰を浮かして外を眺めた。
迫る土煙。
先日の襲撃が思い出されて、ルシアは体を震わせた。
「っ……あれはっ…」
「敵襲かもしれません」
冷静なリューイの声音に、剣を掴む。
「皆、剣を抜け!!」
突然のリューイの号令に、周りの兵たちが慌てる。
「リューイ! 私も戦うわ!」
「いけません! 敵の狙いはおそらくあなたの命。絶対に私が守りますので馬車から出ないください」
「そんな…っ…」
まだギリギリ、アノアの国内。
近付く敵のいでたちがアノア兵のそれに酷似していて、リューイは目を細めた。
「あれはっ……我が国の…」
「動じるな。変装の可能性が高い」
手綱を引いて、馬を止めたリューイは、ルシアの護衛としてついて来たアノア兵に言葉を返した。