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† 姫と剣 †
第8章 刺客
「なんで…っ」
自分のせいで人の命が儚く散って行く。
自分も戦いたい。
でも…
────────── 敵の狙いはおそらくあなたの命。絶対に私が守りますので馬車から出ないください
馬車から出れば、余計に迷惑をかけてしまうかもしれない。
葛藤しながら、ルシアは外の様子を眺めることしかできない。
無力だ。
『姫』というだけで兵士たちと命の重さは変わらない。
それなのに、皆が自分の命を懸けて守ってくれている。
守ってほしいだなんて思っていない。
ぎゅっと両手を握っていると、馬車の後方から「きゃーー!!」と悲鳴が聞こえてルシアは、窓から顔を出した。
「たっ、助けて…!!!!」
後ろの馬車から、マヤとアマンダが頭を抱えて悲鳴を上げている。
「マヤ! アマンダ!」
「ルシア様っ……!」
涙目のマヤに、敵が近付く。
丸腰の2人はこのままではやられてしまう。
唇を噛んだルシアがリューイの方を見るが、リューイにも敵が迫っていて、とてもマヤたちを助けられそうにない。
「ごめんなさいリューイ…!!」
すかさず剣を掴んだルシアは、馬車の扉を開けてマヤたちの元へと向かう。
マヤたちに振りかぶる大柄な男。
動きが遅い。
すばやく立ち回ったルシアは、剣を抜くと、男の脇をつく。
「ぐっ…!」
倒れ込んだ男の脇で、ひぇ!と声を上げたマヤは、ルシアを見上げてポロポロと涙を流していた。