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† 姫と剣 †
第8章 刺客
風がヒュと音を立ててリューイの前に小さな渦を作る。
「むしろ、このハンデだけでいいのか」
「なに………⁉︎」
「自信がないというなら、目隠しでもしてやるぞ」
「ちっ…! ぶち殺してやる!」
2人が睨み合う最中、ルシアは逆方向から向かってくる敵にハッと息を飲む。
「リューイ、私はこっちを」
「─────頼みます」
思いがけない言葉に、ルシアは少し驚いた顔をした後に、居直って剣を握る。
「任せて」
いつもより体が軽い。
守られてばかりはやはり性に合わない。
「頼みます」というその一言だけで危機的状況にも関わらず、不謹慎にも心が少し弾んでいる。
「ちょこちょこ動くんじゃねぇ!」
「…あなたが遅すぎるんじゃない?」
いつものごとく、まるで舞を舞うように敵の周りを軽やかに動いて、隙をつく。
「うっ…」と声を上げて、敵が倒れる。
振り返ってその姿を確認すると、ふぅと息を吐いて、リューイのたちの方を見た。
馬上から降る敵将の剣をリューイは受ける。
そしてすかさず身を交わすと、リューイは敵の馬の手綱を掴んで斬りつける。
「おい! 貴様!」
敵の馬がいななきながら、体勢を崩す。
一対一なら造作もない ────
あまりに容易く敵将は馬から落ち、地面に叩きつけられて身を横たえた。
「っ……」
「そろそろ、誰の指示か言いたくなったか」
リューイは敵将の喉元に剣を突きつける。
ギリと奥歯を噛んでリューイを見上げていると、遠くでルシアが拳を高らかに上げていた。