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† 姫と剣 †
第8章 刺客
「次は……何をしたら?」
流血が止まらないルシアの顔色が悪い。
その様子にリューイはグッと歯を食い縛る。
「こいつを助けたければ…」
「─────────」
「死んでいただけますか?」
その要求に、リューイは大きく目を見開く。
「貴様っ…! バカなことを────」
「────そしたら、リューイは助けてくれるの?」
「ええ。約束しましょう」
敵将は、顎で背後の兵士に「行け」と指示を出す。
指示を受けた手負の兵士が敵将の背後から、よたよたと1人ルシアに近付く。
そして、先ほど飛んで行ったリューイの大剣を拾い上げた。
「あら……その剣で斬ってくれるの…?」
「姫っ……! やめてください!!!! そんな──」
「──リューイ、ごめんなさい」
「っ…………」
いつもの優しい笑みにリューイは息を飲む。
「自分が死ぬより、あなたを失う方が……私には辛いの────」
ルシアの瞳から、一筋の涙で落ちて頬を伝う。
「ルシ…ア姫っ……!」
ふぅと息を吐いたルシアは、鋭く敵将を見つめる。
「死んでしまった後では、リューイが解放されたことが分からないわ。私を殺すのは、その手を離してからよ」
敵将は、フンと笑う。
無論、リューイも助ける気はもともとない。
いくらローハーグ一番の騎士といえども、今は丸腰。
ここで手を離したところですぐに殺すことなど容易い。
それにここからの距離では、手を離してもルシアを助けに行くのは叶わない。