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† 姫と剣 †
第8章 刺客
「ええ。もちろんですよ」
敵将の返事を聞いて、ルシアはそのままくずれこむように膝をつく。
自然と恐怖は感じなかった。
リューイを守って死ねるのなら、本望かもしれない。
やはり、自分を守って誰かが死ぬよりこっちの方がいい。
それはわがままかもしれないけれど…
心は驚くほど穏やかで、自然と顔が緩む。
段々と目が霞んでいるのは、腕の傷からの出血がきっと原因なんだろう。
遠くでリューイがいまだに「やめろ!!」と叫んでいるのが聞こえる。
「リューイ……」
あぁ…
私やっぱり
あなたが……
「好きよ」
力のない小さな声。
これじゃあリューイに聞こえたか分からない。
そんなことを思いながら、ルシアは敵将がリューイを解放するのを見届ける。
きっとリューイなら、こんな状況でも生き延びるはず…────
後悔という後悔はないけど…
欲を言えばやっぱり過去のことをもっとリューイから聞きたかった。
その瞬間からルシアはすべてがスローモーションに見えた。
案の定、間に合うはずもないのに、リューイは勢いよく走り出してこちらに向かってきているのが見える。
目の前の大男が敵将の指示を受けてリューイの大剣を振りかざしている。
最後に、彼の剣で死ねる。
そんなことに幸せを見出して、ルシアは運命を受け入れるべく顔を上げた。
「ルシアーーーーー!!!!!!」
リューイの叫び声を聞きながら、ゆっくりとルシアは目を閉じた。