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† 姫と剣 †
第8章 刺客
シュッと風を切る音とともに、ルシアのスローモーションが終わる。
「うっ………」
途端に、ルシアを斬ろうした兵士の胸に、飛んできた剣が刺さり、リューイの大剣が高く空中を舞う。
リューイは、崩れていく兵士の姿にハッとしながらも、ルシアの元に駆け寄る。
そして、ルシアの背後から、姿を現したロイの姿に大きく目を見開いた。
「─────────…」
互いにルシアの前でへたれ込んだ兵士の背中を踏み台に、高く飛ぶ。
「剣、借りるぞ」
「あぁ」
すれ違いざま、ロイはそうリューイに言うと、宙を舞っていたリューイの大剣を掴む。
そして、ロイは敵将の前に、リューイはルシアの前に着地した。
「お前はっ……何者だ!」
「随分我が兵と遊んでくれたようだな」
ロイは、辺りを見回して、負傷しているアノアの兵を見る。
「女みたいな顔をして。何をごちゃごちゃと言っている」
「王子として礼を申し上げよう」
「っ……王子だとっ…⁉︎」
ロイは同様を見せる相手に容赦なく剣を振る。
カンと剣の音が響く。
「なかなかやるようだな」
「まさか…っ…王子がおでましとはな」
返ってきた重みに、ロイは表情を変えずにそう言葉を返す。
少し剣を交えただけで、強い相手だということが分かる。
慣れぬ大剣を構え、振りかざす。
ロイもリューイほどではないものの剣技は得意なのだが……──
「つっ……」
敵はロイ以上にすばやく立ち回る。
そして、ロイの頬に浅い傷が入って、ツーと血が流れた。