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† 姫と剣 †
第8章 刺客
「いや〜それにしても、無事でよかったね!」
いつもの飄々とした態度に戻ったウィルに、イーサとロイは肩を落とす。
「ウィル……弟ながら…お前はやはり気味が悪い」
「同感です」
髪をかき上げながら、ロイがそういうとウィルは「ひどいなぁ」と言いながら笑う。
ひとまず、アノアの王子たちのお蔭で、その場が落ち着く。
イーサたちアノア兵が、負傷した兵士たちの手当てを始める中、ロイは少し離れた場所からルシアとリューイの姿を見つめていた。
ルシアの元に駆け寄ったリューイは、纏っていたマントを外し、強引に破くと、それをルシアの腕に巻きつけていた。
だが、手が震えていて、うまく巻けない。
「姫っ……」
出血が止まらない。
そのせいか、意識が朦朧としているルシアを抱えながら、リューイは何度も「姫」と声を掛ける。
やっと腕に布を撒き終えたところで、ルシアはリューイを見つめて微笑んだ。
「リューイ……」
「っ……」
「…無事で…よかった」
この期に及んで、自分の無事を喜ぶルシアの姿にリューイはグッと歯を食い縛る。