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† 姫と剣 †
第8章 刺客
ルシアの頬にポタリと水滴が落ちる。
それがルシアの涙ではなく自身の涙だということにリューイはすぐに気が付いた。
「リューイ……泣いている…の?」
「私はっ…あなたの命を守るための騎士です…」
「なのに」と続けたリューイの声が震える。
「騎士のために姫が命を賭けるなんてっ……そんな馬鹿げた話は聞いたことがありません!」
力なく「へへ」と笑ったルシアをリューイは唇を噛み締めながら見つめる。
「私も…リューイのこと…守りたいの」
ぼたぼたとルシアの頬に落ちていく涙を、リューイは拭った。
そして、優しく、それでいてきつくルシアを抱きしめる。
「本当にっ……あなたは変わりませんね」
リューイの腕の中で、ルシアはその声を心地よく聞く。
変わらない──…
それは昔の話だろうか?
「これじゃああの日と同じじゃないですかっ……」
あの日…とは…
「二度とあのようなことにならないために…私はっ…」
もっと昔の話を聞きたい…
「ルシアっ……」
もっと…もっと…
そう思いながら、ルシアはリューイ抱かれたまま気を失った。