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† 姫と剣 †
第9章 記憶
突然の奇襲で、リューイを庇って命を賭けた時、リューイが言っていた言葉がルシアの頭の中でよぎる。
─────────── これじゃああの日と同じじゃないですかっ……
─────────── 二度とあのようなことにならないために…私はっ…
あの日というのは……きっと今話してくれた日のことなのだろう。
「それで………?」
「…………間一髪のところで…エステル様が来てくださいました」
「お母様がっ…?」
エステル。
それは、ルシアの母の名だ。
「ええ」と返事をしたリューイは、ルシアの顔を見て、切なく笑う。
「エステル様はあなたによく似ていらっしゃった……」
「………………」
「容姿はもちろん、性格も……。とても勇敢で……。狼が逃げていった後、エステル様はフラフラとしながら、あなたを抱き抱えていました」
ギュッと拳を握ったルシアは、記憶にない母を想う。
「エステル様から、父を呼ぶように言われた私は、宮殿に戻り、言われた通り父を呼び森に戻りました。ですが……元いた場所に、あなたも、エステル様もいらっしゃらず…」
「えっ………?」
「父と共に、懸命に足跡を辿りました。そして、しばらく行った先で…」
再び片手で頭を抱えたリューイが苦しそうなのを見て、ルシアは思わずリューイの手をギュッと握る。
「…………辛い話をさせて…ごめんなさい」
居ても立っても居られずにそんな言葉をかける。
やはり、どこか他人事だ。
それに、ルシアには何となく話が見えてしまっている。