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† 姫と剣 †
第9章 記憶



「お母様はそこで命を……」




ルシアの言葉に、リューイは遠くを見つめる。



きっと、当時のことを思い出しているのだろう。





「………あなたの怪我は、思っていたよりもひどく……命に関わるものでした」



「…………………」



「そこに魔女が……」





魔女──────



御伽噺でしか聞いたことのない存在がまさか…




「あの口ぶりからして…魔女は生死を操れるのでしょう」



「あの口ぶり……?」



「魔女はあなたを助ける代わりに…エステル様の命を要求しました」




ハッと息を飲んだルシアは、リューイから手を離し自身の胸の前でギュッと拳を握った。




「まさかっ………お母様は…私の代わりに…っ」



リューイは返事をすることなく、躊躇いがちに頷いた。




「…………それだけに飽き足らず……」




顔を上げたリューイはルシアを切なく見つめる。




「あなたから記憶を奪いました」


「…………どういうこと…?」


「……"幸せな記憶"が魔女は好物らしく。あなたからそれを抜き取って……そして去っていきました」


「…………………」




信じられない話にルシアは何も言葉を発すことが出来ずに、ごくりと唾を飲んだ。




魔女が、記憶を……奪った………?



そんなことができるのか。



それに記憶がないのは、母が亡くなったことによるショックだと思っていた。


いつか何かをきっかけに思い出せるものだと、そう思っていたのに……


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