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† 姫と剣 †
第9章 記憶
幸せな記憶……
母の記憶も、リューイの記憶もまるでないのはそのせい……?
「戸惑わせてしまって…申し訳ありません」
黙ったままのルシアに、リューイが声を掛ける。
それでもルシアは、視線を落としたまま…───
「信じられませんよね…」
「あなたは……その現場を見たの…?」
「………えぇ、見ました」
忘れたくても忘れられぬ強烈な記憶。
それにリューイは顔を歪ませる。
─────────────── 娘を助けて欲しくば……命を…
喜んで命を差し出したルシアの母エステル。
それと共に、目を覚ましたルシアに、魔女が近付いて……
─────────────── お前の記憶もいただこう…
妖しく微笑んだ魔女は、ルシアの頭に手を乗せた。
光の玉がルシアから抜けた後、それは姿を変え、まるで水晶のような形を成し、魔女の腕の中へ……
再び倒れたルシアに、リューイが駆け寄ると、魔女が「なるほど」と言いながら再び笑った。
──────────────── お前をかばってこうなったか
──────────────── すべて……お前のせい
幼いリューイの胸に突き刺さった魔女の言葉。
それが呪いのように未だにリューイを苦しめている。