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† 姫と剣 †
第9章 記憶
両の手を爪が食い込むほど力強くリューイは握る。
「………私のせいです」
「リューイ……?」
「私が強ければ……エステル様は命を落とさず……あなたの記憶も無くなりませんでした…」
「………………」
「……ランドルト家はその責任をとって……宮殿を去りました」
体を震わせて、後悔を滲ませるリューイを見て、ルシアはベッドのへりに座って向かい合うと、黙ってぎゅっと抱きしめた。
暖かい温度。
何も思い出せない。
それどころか懐かしさも感じることはできないけれど…
「なのに…あなたはまた私のそばに戻ってきてくれたのね」
「─────────……」
「ありがとう……。そして、覚えていなくてごめんなさい」
ルシアの瞳から涙が溢れる。
そして、体を離して立ち上がったリューイは、ルシアの顔を見下ろしながら、その涙を優しく拭った。
「戻ったのは……あなたとの『約束』を果たすため」
「『約束』…………」
幾度となく聞いた言葉─────…
視線が熱く絡んで、顔が近付く。
目を細めた2人は、静かに目を瞑る。
そして─────…
時計の鐘の音に、びくりと体を震わせ目を開くと、リューイは我に返って顔を離した。
「……今日はもう休んでください。たくさん出血していました。顔色もまだ戻っていないですし…」