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† 姫と剣 †
第10章 覚悟
「…………『でも』と続くのでしょう?」
見透かされて、ルシアは少し目を見開く。
そして外したルビーの指輪を手のひらに乗せて、それをロイに差し出す。
「……あなたの…妃にはなれません」
「─────────…」
「信じていただけるか分かりませんが…弄ぶつもりは本当になくて────」
「────分かっています」
ロイは、ルビーを乗せるルシアの手を上から握った。
「本当にごめんなさい」
苦しそうな彼女の顔を見ながら、気を遣わせないように笑う。
だが、どうもうまく笑えている気がしない。
ロイは先日の奇襲での出来事を思い返していた。
愛しているから、命を惜しまずその人を助けたいと思った。
初めて、自分よりも他人を優先した。
だからこそ……
ルシアが、その身を挺してリューイを守ったことの意味が分かってしまった。
最初から、分かっていたものをあそこまではっきりと見せられると、もはや手も足も出ない。
リューイが戦いの場に現れなかったのでない。
もともと、自分がその場に立つ資格さえなかったのだと、ロイは感じていた。
「………それでも立場が変わるわけではありませんよ」
「………えぇ、分かっています」
返されたルビーの指輪を眺めながら、ロイはゆるく笑う。
ロイとの結婚をやめたところで、ルシアとリューイは、やはり姫と騎士、だ。