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† 姫と剣 †
第10章 覚悟
「やっぱり、私の妃に、と思い直すようなことがあれば、いつでもお声がけください」
困ったように笑うルシアに、ロイもニコリと笑みを崩さない。
そして、少し屈むとルシアの耳元に近付く。
「ただ、このままっていうのも癪なので、少し意地悪させてください」
「へ?」とルシアが声を上げたのも束の間。
ロイはルシアの頬に音を立ててキスを落とし、力一杯ルシアのことを抱きしめた。
そして、遠くでその様子を眺めるリューイに挑発的な視線を投げていた。
遠目でも、リューイが片眉を上げて不機嫌そうにしているのが分かる。
「ロ、ロイ王子……っ?」
突然のことに身動きが取れず戸惑うルシアをよそに、ロイは、ふふっと笑うとそのままゆっくりと体を離した。
「最後に、いい顔が見れました」
「顔………?」
「えぇ、これくらいしてもバチは当たらないでしょう」
ロイの言いたいことが掴めぬまま、ルシアは頭の上にハテナを浮かべている。
「姫……お気を付けてお帰りください」
「………えぇ」
「必ずまたお会いしましょう」
吹っ切れたような、輝かしい笑み。
色々あったが、やはりロイは悪い人間ではない。
出会えて良かった───…
そう思いながら、ルシアも同じように笑みを返して、「はい」と返事をした。