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† 姫と剣 †
第10章 覚悟





アノア国境間際。







馬車の窓から、頭を下げるルシアにロイは馬に乗りながら、笑みを返す。



先日のことがあったために、警備は厳重。


さらには…



「ロイ、俺があの騎士ぶちのめしてあげようか?」



「やめとけ、ウィル。あの騎士はおそらく今この世界で1番強い騎士だ。お前じゃ敵わない」




ロイの両脇から同じく騎馬したイーサとウィルが会話する。




「兄上方までいらっしゃらなくても良かったのですがね」



先日のことがあったとはいえあまりに仰々しい見送りに、ロイは呆れ返る。




「えーだって、失恋した弟が心配じゃん?」



随分と軽々しい言い方に、不満が募る。



「……安っぽい言葉で片付けないでいただきたい」




遠のく馬車を尻目に、ロイは祖国へと馬の向き変えた。




「ロイ……」




1番上の兄であるイーサに呼ばれて、ロイは顔を向ける。




「お前は随分といい顔をするようになった」



「………─────」



「あの姫には…感謝をしなくてはならないな」




あまり笑わない兄の、優しい笑みにロイは思わず「んん」と声を詰まらせた。




「あ!そうだ、今夜俺のおすすめの女をお前のところにやるよ」



いい雰囲気をぶち壊す真ん中の兄、ウィルをロイは目を細めて見つめる。
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