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† 姫と剣 †
第10章 覚悟




「お前の…命をっ…」



微かに震えている父の姿をルシアは強く見つめた。




「アノアに行く前、リューイが怪我をしたことがありましたが、その時も実は…奇襲されたのです」




初めて聞く話に、ついていけないとばかりに王は目を見開いていた。



あの事件は、ロイに攫われたあとに起きたことだった。


外交に関わる。


さらには、戦争も免れないと考えたルシアは、その後の奇襲のことも周りには言っていないままだった。




「今回、その時と同じ敵がアノアからの帰国の際に襲って来ました」




そう言いながら、ルシアは自分の腕を掴んだ。




「この傷はその時に受けたもの…。でも大丈夫です。大した傷ではありません」




ふふっと笑う娘に、父は、はぁ…とため息をつくと、さらに近付いて、手を広げルシアをぎゅっと抱きしめた。




「お、とう様?」



ローハーグ王は、ルシアにとって、昔から厳格な父だった。


愛してくれてはいる…のだろうが、あまり顔を合わせてくれない。


そればかりか、大人になるまでは勝手に外に出るなという命令が下されて、ルシアはほとんどの時間をこの宮殿で過ごしていた。


そんな父が、今、動揺して、抱きしめてくれている。


少し不思議な感覚がして、


そして、温かい…


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