この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
† 姫と剣 †
第10章 覚悟
「お前の…命をっ…」
微かに震えている父の姿をルシアは強く見つめた。
「アノアに行く前、リューイが怪我をしたことがありましたが、その時も実は…奇襲されたのです」
初めて聞く話に、ついていけないとばかりに王は目を見開いていた。
あの事件は、ロイに攫われたあとに起きたことだった。
外交に関わる。
さらには、戦争も免れないと考えたルシアは、その後の奇襲のことも周りには言っていないままだった。
「今回、その時と同じ敵がアノアからの帰国の際に襲って来ました」
そう言いながら、ルシアは自分の腕を掴んだ。
「この傷はその時に受けたもの…。でも大丈夫です。大した傷ではありません」
ふふっと笑う娘に、父は、はぁ…とため息をつくと、さらに近付いて、手を広げルシアをぎゅっと抱きしめた。
「お、とう様?」
ローハーグ王は、ルシアにとって、昔から厳格な父だった。
愛してくれてはいる…のだろうが、あまり顔を合わせてくれない。
そればかりか、大人になるまでは勝手に外に出るなという命令が下されて、ルシアはほとんどの時間をこの宮殿で過ごしていた。
そんな父が、今、動揺して、抱きしめてくれている。
少し不思議な感覚がして、
そして、温かい…