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† 姫と剣 †
第10章 覚悟
「リューイにお願いして…。リューイのお父様に会おうと思います」
「アースに…か」
アース。
きっと、それはリューイの父の名前なのだろう。
「そして…私は、森の奥へ行きます」
「……!?」
王は、勢いよく振り返る。
そして、リューイは、やはりか…と思いながら深く息を吐いていた。
「何を言っておる! 森は危険だ! 奥には凶暴な生き物と───」
「────『私の記憶を奪った』魔女が、いる…ですよね?」
「………」
「…知りたいのです。私には、お母様の記憶がありません」
「だが…」と言い淀む父の手をルシアは強く握った。
「懐かしむ気持ちすら…ないのです。この気持ちが分かりますか」
王は、迫るルシアに言葉を失う。
「魔女は…得体が知れないけれど…話してみる価値はあると思うのです」
そして、立ち上がったリューイが、「王…」と口を開いた。
「私もついていきます。少しでも危険だと判断すれば、無理にでも戻ります」
「リューイ…」
「姫、約束してください。無茶をしない、と」
「もちろんよ」
王は「む…」と唸った後、ハァとため息を吐いた。
「いつまでも隠しておけることではなかった…な」
「お父様…」
「リューイの言う通り、危険と分かれば、すぐに戻れ」
「はい」と返事をしたルシアは、リューイに笑顔を向けていた。