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† 姫と剣 †
第10章 覚悟
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翌日。
宮殿の中庭。
咲き誇る花たちを摘みながら、ルシアはまた花冠を作っていた。
「そしたら…次はここに通して…」
「お、お姉さまもう一度教えて?」
妹のシャロンに作り方を教えながら、もう一度ゆっくりと花を編む。
「う〜ん」と唸っているシャロンの様子に微笑みながら、ルシアはその手元を手伝う。
「あ、いい具合ですよ! シャロン様!」
「ちょっとマヤ…! 話しかけないでちょうだい!」
「っ…ごめんなさい……」
マヤとシャロンのやりとりにルシアもふふと笑う。
そしてしばらくして、少し不恰好な花冠が出来上がると、シャロンは喜んで花冠を両手の平に乗せて掲げた。
「やっと出来たわ!」
「うん、素敵ね、シャロン」
花畑に腰掛けながら、立ち上がったシャロンを見上げると、シャロンはふふっと笑いながら、出来上がった花冠をルシアの頭の上にのせた。
「シャロン…?」
「初めての花冠はお姉さまに、って私きめていたの」
「────…」
色々と思いつめた日々の中で、たった一つの木漏れ日のような存在。
ルシアは、思わず涙しそうになりながら、シャロンに笑みを向ける。
過去の記憶はない。
それでも、記憶を奪われたその後からでも、宝のような存在が自分にはある。
「ありがとう──…」
ルシアがそうシャロンに言葉を返したあと、突然「姫」と呼ばれてルシアは、声の方向にある二つの影を見つめながら、そっとその場で立ち上がった。