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† 姫と剣 †
第1章 お忍び
「っ………」
見えないほどの素早いルシアの動きに、グレンはヨタヨタと体のバランスを崩す。
「ちょこちょこ動くんじゃねぇ…!」
「あなたが遅すぎるのよ」
クルクルとまるで踊りを舞うかのように、グレンの隙をついて攻撃を交わす。
「くそっ………なんだお前っ…」
「今日は後ろで守らなきゃいけない少年もいないし、ね。」
フッと笑ったルシアに、グレンが完全に焦った表情を見せたその時、ルシアは腰の剣を抜いて、グレンの方へと突き出した。
「お、おいっ……こ、殺すなっ…!!!」
パニックに陥ったグレンが無様に叫び出すと、ルシアはコクリと頷く。
「もちろん、そんなつもりはないわ」
「なっ……!」
「────────起きたら、ちゃんと街から出てって」
ひゅっとグレンの脇に滑り込んだルシアは、グレンの耳元で囁く。
そして、グレンの背後から、グレンを見ることなく剣の柄の部分でグレンを突いた。
うっ……と鈍い声を発したグレンは、そのまま膝をついてその場で倒れた。
完全に気絶して伸び切った様子のグレンを見て、ふぅ……とため息をついたルシアは剣をしまう。
良かった………
ルシアの緊張が解け、リューイの家に向かおうと振り返ろうとしたその瞬間、再びの張り詰めた空気を察してルシアは身構えた。