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† 姫と剣 †
第11章 森の奥
「っ……───」
記憶の中の獣と目の前の獣の姿が重なって、リューイは、自分の身が震えるのを感じた。
手も足も出ず、震えることしか出来なかったあの時。
守るはずのルシアに守られて、目の前で怪我をしたルシア…
だが、もう今は違う───…
それに…
「お前…思ったより、大きくなかったんだな」
ぎゅっと剣を強く握り直したリューイは、そのまま剣を振りかざし、切りつける。
それとともに、次々と現れる狼はリューイとルシアの周りをあっという間に囲った。
グルルルルと、狼たちが唸る。
霧が濃くて見通しが悪い。
「姫、離れないでください」
「えぇ、分かってる!」
背中を合わせた2人は共に剣を構え、飛び付こうとしてくる獣たちを斬る。
だが、数が思ったよりも多い。
踏ん張りながら、次々と狼を倒していく中で、ルシアは狼たちがある軌道からしか攻撃してこない事に目を細めた。
そして、何の気なしに地面を見る。
狼は……
日が漏れているところを避けている……?
ハッとしたルシアは、狼と対峙しながら頭をフル回転させた。
「確かっ……この辺りに生息する狼は────」
夜行性で、そして、湿気のある場所を好む。
赤く光る瞳は……
「紫外線に弱い……!」
そう呟いたルシアは狼を跳ね除けると上を見上げた。