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† 姫と剣 †
第11章 森の奥
ルシアは、その光の玉に魅せられながら、直感的に手を伸ばす。
これは……
"記憶"だ。
「お前が探しているのはこれだな……?」
「返してっ……お願い…─────」
切実な叫び。
だがまるでその水晶のような光の玉はふわふわと魔女に操られ、ルシアの手には届かない。
「これは、私の宝だ……。毎日のようにこれを覗き、お前の記憶の中を彷徨い…」
そう言いながら、魔女はうっとりとした表情を見せる。
「他のどの記憶よりも……これが一番…好きだ」
「っ………」
返せそうにない状況に、ルシアはグッと奥歯を噛む。
そして、その脇でマリーが苛立っているのが見えた。
「リサ、ゴタゴタ言っていないで早く殺しておしまい」
「……………殺してしまったら…この記憶も消えてしまう」
リサと呼ばれた魔女は名残惜しそうにルシアの記憶の水晶玉を見つめた。
「そんなもの、また他の者から取ればいいじゃないの」
「……………………」
「またしくじることは許さぬ。あの時もお前は勝手なことをして……。もう10年以上、その記憶を手元に置けたのだからよいではないか」
マリーの話はいまいちよく分からない。
ただ、あの時と言っているのはきっと、ルシアの母エステルの命を奪い、ルシアの記憶を奪った時のことを言っているんだろうということは、ルシアも察しがついた。