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† 姫と剣 †
第11章 森の奥
魔女らしくなく、魔女はあからさまに心の揺らぎを見せている。
マリーとこの魔女の関係が分からない。
「さぁ、早く。リサ」
「………………」
「早く! 2人の命を!でないと…兄上に全てをばらすぞ!」
マリーの言葉に、魔女はハッと息を飲んだ。
そして、何かを諦めたように、息を吐くと天を見上げて両手を掲げる。
「あっ………!」
魔女の手の中にあったルシアの記憶の光の玉が、まるで煙のように消えていく。
そして、ただならぬ雰囲気にリューイはルシアを起き上がらせて自身の後ろに匿った。
「っ……リューイ…」
「ほぉ…今度は……お前が守るか」
「これ以上、姫に近付くな」
まさに命懸け。
キツい視線を投げつけるリューイを見ながら、魔女は心を震わせる。
「あぁ……美しい…」
「──────……」
「やはりお前の記憶を手放すのは惜しい…」
両手をかざした魔女は、同時にルシアとリューイの命を抜き取る魔術をかけようと唱える。
ルシアたちは抗おうにも抗えない。
風が巻き起こって体の力が抜けていく。
「くっ……」
「あの日を……あの日を思い出す」
そう言いながら、魔女は今のルシアの姿とかつてのエステルの姿を重ねる。