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† 姫と剣 †
第11章 森の奥
「待てっ………」
ローハーグ王の言葉に、魔女の足が止まる。
「頼む……ルシアの…娘の記憶を…返してやってくれ」
「お父さまっ……」
恐れることなく、切実にそう伝える父の姿にルシアは胸を震わせる。
魔女は、そのまま振り返らない。
「………王妃は……私が殺した」
「……っ……………」
「それを知っていて、私に頼んでいるのか」
「………知っている」
ローハーグ王は、そのまま視線を落とすとギュッと目を瞑った。
愛する妻を失った時のあの胸の痛み。
それは今でも癒えていない。
だが……
「お前が……その力でルシアを救ってくれたのもまた真実……」
「……………」
ローハーグ王は、横でこちらを見上げている娘を見つめた。
妻が命をかけて残した宝……
「それに関しては……感謝をしている」
思いもよらない言葉に、魔女は震えながらゆっくりと振り返った。
長いウェーブした黒髪。
その隙間から、チラリと瞳が見える。
じっと魔女の顔を見つめていたローハーグ王は、見覚えのある顔に眉を寄せた。
「………お前は……」
「……あなたは……いつだってそうお人好し…だ」
一筋の涙が魔女の瞳からこぼれ落ちる。
わなわなと震えていたマリーは、痺れを切らし兄であるローハーグ王を指差した。