この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
† 姫と剣 †
第11章 森の奥

その場がシンと静まり返る。
呆気なくマリーが生き絶える様を見て、周りの兵が怯える中、ローハーグ王は魔女へとゆっくりと近付いていった。
「お父様っ……危険ですから近付か────」
「────── お前は……あの…『リサ』なのか」
親しげに、魔女を呼ぶ王の姿に、ルシアもリューイもアースも目を見開く。
『リサ』
たしかに、マリーはその名で魔女を呼んでいた。
「………リサ」
再び名を呼ばれた魔女は、息を整えながらローハーグ王に向き直る。
そして、被っていた黒いマントを外し、魔女とは思えぬほど穏やかな笑みを見せた。
「やはりっ………リサだな……!」
「アルノ……」
魔女は……いや、リサも同じく王の名を呼ぶと、再び目いっぱいに涙を溜める。
街の商人の娘だったリサ。
幼い時、昔から街へ遊びにきていたアルノと出会い、よく遊んでいた。
当時は王子だったアルノは本当に気さくで、まるで王族には感じなかった。
幼い時の素敵な思い出────
次第に、アルノに誘われて宮殿にも出入りするようになっていった。
友だちのいない妹の話し相手になってほしいと言われ、マリーとも話すようになり……
とにかく、リサはアルノが喜ぶことなら何でもした。
リサにとってアルノとの過ごす時間はどんな時間よりも輝いていたから───…

