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† 姫と剣 †
第11章 森の奥


叶わないと分かっていながら、身分違いの恋心を抱き…



それでも想うことは自由だからと、リサはアルノと多くの同じ時間を過ごした。


側にいるだけ、想うだけ。


それだけで幸せだった、はずだったのだが───…


隣国貴族の娘であるエステルと出会ってから、アルノはエステルの話しかしなくなってしまった。


そして何をするのもエステルが一緒になった。


ずっと、アルノを見てきたリサだからこそ、すぐにアルノがエステルに恋をしていることが分かった。



エステルが嫌なやつであったら、まだ救いがあったかも知れない。



だが、エステルは身分違いのリサも全く差別せずいつも笑顔で優しかった。



見た目も美しく、アルノが夢中になるのも頷ける。



仕方のないこと。



そう割り切って、リサは想い人が想いを遂げる姿を横で見てきた。



その後、アルノとエステルは結婚し、ルシアを授かり────…



あまりに輝かしい2人の姿を見ていると、諦めたはずなのに心の中に何か黒いものが湧いて出る。


大人になると、身分の違いが露骨に出る。


アルノは家族に夢中でリサとは話さなくなり、リサも宮殿へ出入りすることは無くなった。



フツフツと言いようもない思いがくすぶって、胸がざわつく毎日。


好きなら…


愛しているのなら…幸せを願うのが当然。



そう言い聞かせて言い聞かせて…



自分を騙して毎日を過ごす。





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