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† 姫と剣 †
第12章 恋慕





夜。



まだ赤ん坊のシャロンが寝ている様子を見ながら、ふふとルシアが笑う。



そんなルシアの頭をエステルが優しく撫でた。





「本当に素敵なお姉さんね、ルシアは」




優しい母の香り。



思わずギュッと母の足元に抱きつくと、エステルはしゃがみ込んで、ルシアを抱き締めた。




「急に、甘えん坊さんね」



「…………今日、ミサンガ……」



「えぇ、約束したものね。教えてあげるわ。ここに座って」





柔らかい物言い。


それがルシアはたまらなく好きだ。


沢山の刺繍糸の前で、ルシアは母の隣に座る。




「ミサンガってお願い事をこめるんでしょ……?」



「そうよ。切れてしまった時、その願い事が叶うと言われているの」




そう言いながら、エステルは刺繍糸を手元に手繰り寄せる。



その様子をルシアは目を輝かせながら眺めていた。




「さぁ。じゃまずは2色選びましょう」




母の問い掛けに、ルシアは明るい茶色の糸を掴む。




「茶色………?」




思ったよりも暗い色に、エステルは首を傾げた。


だが、ルシアは元気よく頷きながら、今度は深緑の糸を掴んだ。




「どうして、その色なの?」



「リューイの瞳の色と私の瞳の色!」




見上げたルシアのことを、エステルは目を丸くしながら見つめる。




「ずっと一緒にいられるように願いをこめて、そしてリューイにあげるの」



「………そう…リューイに、ね」




娘の淡い初恋に、エステルは優しく微笑む。


そして、そのままルシアにミサンガの編み方を教えていた。


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