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† 姫と剣 †
第12章 恋慕

母の日の前日。
ルシアはリューイが来るのを待ちながら、宮殿裏の広い庭にて花たちを眺める。
どのお花がいいか……
いつも花冠を作っているお花では少し物足りないような気もしていた。
「ルシア」
気配もなく突然後ろから呼ばれて、ルシアは震え上がる。
「マリー叔母様……」
「何をしているの……?」
不健康とも思えるほどの細い体。
そして、何を考えているのよく分からない様子でニコリと笑ったこちらを見ている。
「母の日が近いから……お母様に渡すお花をどうしようかと…」
少し俯きながら、ルシアがそういうとマリーは、軽く目を見開いたあと、フッと笑った。
やはり血が繋がっているとはいえ、どこか不気味さがあって怖い、とルシアは幼心にも思った。
「エステルの……お前のお母様の好きなお花なら……この奥に────」
そう言いながら、マリーはその細い腕を森の方へと伸ばした。
「森……に……お母様の好きなお花が……?」
コクリとマリーは頷いた。
「青い、綺麗な花だ。それが森の奥に咲いている」
「……で、でも……森は危ないから、行っちゃダメって…」
ふふとマリーは笑う。
「心配ない。あれは子どもを寄せ付けないための大人のウソだ」
「………………ウソ…?」
「そう。奥には様々な色の多様な花が咲き誇っている」
マリーの言葉に、ルシアは胸の前でギュッと手を握った。
「黙っていてあげよう。明日、1人で行ってみるといい…」
マリーの言葉に、ルシアはゴクリと唾を飲んだ。

