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† 姫と剣 †
第12章 恋慕

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丘の上。
ルシアはその場にしゃがみ込むと、息を大きく吸いながら手を大きく広げて後ろに倒れ込んだ。
風が強く、雲の動きが早い。
開放感に満ち溢れて、久々の自由を感じる。
また、この丘に来られるとは思っていなかっただけに────…
雲を目で追っていると、ふっとリューイがルシアの顔を覗き込む。
それに、ルシアはゆるい笑みを返した。
「姫…先ほどの話ですが…」
「もう、そんな堅苦しく話すのやめてよ。昔は普通に話してたでしょ?」
同じくその場に座ったリューイは困ったように頭を掻く。
「それに……姫はもう、やめて」
「中々、慣れないです」
やはり敬語を崩さないリューイは、軽く息を吐くと、「そんなことより」と言葉を続ける。
「本当に…良いのですか」
「……何が?」
「何がって王位放棄のことです」
先刻の森の中での出来事の後。
ルシアたちは宮殿に戻った。
魔女は王の昔の幼馴染であったらしい。王位を略奪しようと企むマリーに嵌められ、この10年以上の間、魔女として過ごし…
自分の手は汚さず、なんとかしてエステル、そしてルシアの命を奪おうと狙っていた王の妹マリー…
2人の心に宿った闇。
妬ましさに、活力を見出し、人を恨み───…
境遇がそうさせたのなら、加害者は果たして2人だけだと言えるのか。
皆、その答えを分かっているから、もはやその2人の話を深くしようとするものもいない。

