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† 姫と剣 †
第12章 恋慕

慣れた様子で火をつけるリューイの背中をルシアはじっと見つめる。
あの時のことを考えれば考えるほど奇跡としか思えない。
記憶は全くなく、懐かしさも感じることは出来なかったのに、ルシアは自然とリューイに惹かれた。
側にいるのが居心地が良いのに、ドキドキと胸が高鳴る不思議な感覚は、リューイと一緒にいる時にしか感じることができない。
「………あの時のことを思うと、居た堪れないです」
リューイもきっと前にここにきた時のことを思い出しているのだろう。
「どうして……?」
「まさか、本物のルシア姫だとは夢にも思わなかったので、色々と無礼なことを…」
思い出しているのか、リューイは軽く項垂れながら首に手を当てている。
「昔のことを思えば、あの時のあなたの方が私はしっくり来るけど」
服についた雨粒を払いながら、ルシアが笑い混じりにそんなことを言う。
さっきも言っていたが、リューイは、慣れないのだろう。
ただ、これからゆっくりと慣れていけばいい。
もうルシアとリューイは、姫と騎士ではないのだから。
「んん」と唸りながら、リューイは、温かい飲み物を用意している。
ルシアは暖炉の前で座りながら手を光に近付けて暖を取った。
「少し疑問なんだけど……」
「はい」
「私とお母様って似ているのよね?」
リューイの父、アースも『瓜二つだ』と言っていた。
「そうですね」と言いながら、リューイはルシアにマグカップを渡すと自分もルシアの隣に座り暖炉を見つめた。

