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† 姫と剣 †
第12章 恋慕

「だったら…私が身分を偽っていた時、もしかして私が『ルシア』だって分かったんじゃないかなって」
勘のいいリューイのことだ。
『ルビー』だなんて適当な名前を言って騙せたのが今となっては不思議だ。
「王はあの事件をきっかけに、姫が宮殿の出ることを禁じていたはずです」
「……それはそうね」
成人の儀を迎える前にどうしても街に出てみたくて、ルシアはお忍びで街へ飛び出したのだ。
「私はそれを知っていましたし。正直似ているとは思っていましたが……姫に『会いたい』という気持ちが強すぎて、そう見えているだけなのかと…」
「っ……そ、そう」
さらりとしたリューイの言葉にルシアは照れながら、マグカップに口をつけた。
何も知らず、呑気に外の世界を見てみたい程度の気持ちだった自分とは違って、リューイは約束を果たすべくずっと想ってくれていたと思うと嬉しくて堪らない。
のだが……
「……て、ことは、やっぱり、あの時リューイは私のこと『ルシア』だとは思っていなかったってことよね」
「そうですね」
「……そっか…」
少し考え込んでいる様子のルシアの横顔をリューイはチラとみた。
何故か機嫌が悪くなっているような気もして、首を捻る。
「あの……どうかしましたか……?」
「リューイって……浮気性?」
「………どうしてそうなるのですか」
思いもよらぬ質問にリューイは、ギョッとしながら冷や汗を垂らした。

