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† 姫と剣 †
第12章 恋慕



「だって、あの時私だとは思っていないままキスしてきたって事なのよね……?」



「何をおっしゃっているんですか……。結局あなただったわけですし…それに、私は護衛の騎士として王宮に向かうことが決まっていましたから、もう会うことはないと思っていましたし」




何故か少し焦っているリューイがよく喋る。



納得がいかないルシアは目を細めて隣に座るリューイを見た。




「つまりリューイは、もう会うこともないから私に似た女とキスしたってこと……?」


「そういうことではなく…。それに、何度も言いますが結局似ている女ではなくあなた自身だったわけで…」



困るリューイはポリポリと頬を掻く。



そして、さらに「それに」と言葉を続けて伏し目がちになる。





「私の使命は姫を守ること、でしたから。想ってはいたものの、姫とどうこうなろうなどと、そんなおこがましい事は考えてませんでした」



「…………そう」



「もちろん……あなたは私のことを覚えていないわけですし」



床から、視線を上げてリューイはその明るい茶色い瞳でルシアの事をじっと見つめた。




「とは言いながら…確かに、姫を想いながらも、あの時のあなたに……いや、正確にはあなただとは気付いていなかったので……『ルビーに』惹かれてしまい、あなたへの一途な想いを貫けなかったのは自分の弱さというか……。お詫びするのも変な話ですが」



冷静になれば頭がこんがらがりそうな、訳の分からない釈明だ。



それでもリューイが懸命に誠意を見せようとしているのを見て、ルシアは思わずプッと吹き出した。


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