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† 姫と剣 †
第1章 お忍び
たどり着いた小さな図書館の前。
ルシアは看板を見上げて、ふふと微笑む。
「ルシアさま……お願いですからお顔を隠してください」
「だから、バレやしないって言ってるじゃない」
「そうですが……!あと数週間で成人の儀なのですよ!? それが終わったらルシアさまのお顔も王国内外に知れ渡って…あぁ…そうですよっ…!やっぱりそんな大事な儀が待っているっていうのに、街に出るなんてそのこと自体が…」
「違うわ、逆に、成人の儀をしてしまったら、いよいよ街に出ることもできなくなってしまう…。だからこのタイミングを狙ったんじゃない」
飄々としているルシアにマヤは頭を抱える。
これ以上言っても無駄だと悟ったマヤは、とにかくルシアの首元の布を掴み、解けぬようにきつめに巻いた。
「逆に怪しいと思うけどね?」
「いいんです!」
キッとルシアを睨んだマヤも、同じく首元の布を固く縛って口元を隠す。
そして、図書館の中へと進んでいくルシアの後を周りを警戒しながらついていった。
独特の紙とインクの香りが広がる。
すぐ側にある本を手に取ったルシアはパラパラとページを捲る。
「ほら…っ…この本だって王宮にはないわ!」
「ル、ルシアさま! 声が大きいです!」
マヤの言葉も全く聞こえていない、と言った形でルシアはひとりでふふふと笑うと、その本を抱えて、さらに奥へと向かっていた。