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† 姫と剣 †
第2章 成人の儀
結婚。
ルシアがあまり意識してこなかったことが、成人の儀により近い未来となる。
「私の結婚は、同盟のための手段でしかないんじゃない……?」
侍女にされるように着替えながら、ルシアが呟くと、んーとマヤが唸る。
「そんなことないですよ。きっとお父上もルシア様がいいって思う王子じゃなきゃ認めないと思います」
「王子……ね」
またルシアの脳内でリューイの姿が浮かぶ。
想いが通じ合ったあの日、暖炉前で見せたあの切なそうな表情。
後ろに雑に縛られた亜麻色の髪に、明るい茶色い瞳───
もちろん、彼と結ばれることなど有り得ない。
ルシアの腕に衣装を通そうとする1人の侍女をルシアは見つめる。
「あなたは……結婚しているの…?」
「私ですか…?」
「アマンダは、一年前に結婚したばかりの新婚さんですよ!」
マヤの説明に、アマンダと呼ばれた女は顔を赤くする。
そう…と小さく相槌を打ったルシアは、アマンダの恥ずかしそうな様子を見て少し切なく笑う。
「素敵ね」
「……ルシア様……まだあの騎士のこと、気にされてるんですか…?」
元気のないルシアの様子に、マヤは皆に聞かれないよう、ルシアに耳打ちをする。
案の定ルシアは図星と言わんばかりの反応を見せたのを見て、マヤは呆れたように小さく息を吐いた。
お忍びで街へ行っていたのは高々2週間程度だ。
そんな短時間でそこまでの恋に落ちるのか、マヤには疑問だった。
しかも最後には剣を突きつけられたような相手に、だ。