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† 姫と剣 †
第2章 成人の儀
はらりと落ちたルシアの髪の束を掴んで整える。
「時が癒しますよ」
マヤの言葉に、ルシアは目を瞑る。
時が………
本当だろうか。
いつかこの気持ちを忘れてしまう時が来るのだろうか。
そもそも忘れたいと思っているのだろうか。
自問自答するルシアの足元で侍女のアマンダが「あれ?」と声を上げた。
「ルシア様、これは……」
アマンダの言葉に、ルシアは片足をあげる。
「ミサンガ…ですか?」
「……そう」
「私がお仕えし始めた時にはもうつけていらっしゃいましたよね」
マヤの言葉に、ルシアはコクリと頷く。
「いつからか……は覚えていないんだけど」
気付いた時にはルシアの足首に付いていた。
記憶がないほど昔の出来事。
それでも外してはいけないような気がして、今に至るまでつけているのだ。
「そうなんですね」
「邪魔……かな? できれば外したくないんだけど」
「いえいえ、足元ですし、衣装を着てしまえば隠れますので大丈夫ですよ」
アマンダの言葉に、ルシアはホッと胸を撫で下ろす。
そして、全ての支度が終わると鏡の前に立った。
再度を編み上げた金色の長い髪。
水色の公式な王族ドレスには、白くユリの刺繍が施されている。
「本当、お綺麗です……。あとは成人の儀で授かるティアラだけ、ですね」
マヤを始める周りの侍女たちがうっとりと息を漏らす中で、ルシアは部屋の隅に置かれた自身の剣を見つめた。