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† 姫と剣 †
第13章 姫と剣
「……それと…お父様から、言伝が」
「ことづて……?」
「ええ」
少し大人びた表情を見せるシャロンに、ルシアは胸が温かくなるのを感じた。
「リューイお兄さまに、近衛兵たちの指導を頼みたいって言ってたわ」
「……私に、ですか」
驚くリューイに、シャロンはコクリと頷く。
そして、「あと…」と言葉を続けたシャロンは、ルシアの両手を掴んだ。
「姫として…戻ってこないかって……おっしゃってたわ」
「………………」
「近衛兵の教官長との結婚なら、国民への理解も得られるし、って」
じっとシャロンに見つめられたルシアは、そのまま、視線をリューイに移す。
思ってもみなかったローハーグ王からの進言に、リューイも信じられないとばかりに目を見開いている。
そして、ルシアはそのままその背後にいる大勢の街の子供たちをみたあと、空を見上げた。
「……願ってもないお話ね」
「じゃ、じゃあっ……」
身を乗り出し、先走ってマヤが喜ぶ。
けれど、ルシアは首を横に振ってシャロンを見つめ返した。
「だけど……私、ここが好きなの」
家族のいる宮殿も、もちろん、素敵な場所だけれども…────
自然豊かで、人々が笑い合う街の中。
様々な人に慕われるリューイを見ながら、ここで子どもたちに剣術を教える。
平凡で、それでいて、こんなにも美しい場所はない。