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† 姫と剣 †
第1章 お忍び
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満面の笑みで本を数冊抱えているルシアに駆け寄ったマヤは、ルシアから本を奪い取る。
「大丈夫よ、本くらい持てるから」
「いいから…! 今度こそ帰りますよ!」
はいはい、と返事をしたルシアは胸をときめかせていた。
先程マヤが言った通り、王宮の中にはこの国で1番大きな図書館がある。
本が大好きなルシアは、その図書館のほとんどの本に目を通したわけだが……
「やっぱり、世界は広いんだわ!」
「はい?」
「だって、まだ読んだことのない本がたーーくさんあったもの!」
街の小さな図書館にはそんなルシアでも見たことのない本がたくさん広がっていた。
また来よう……
マヤに言ったら怒られそうなことを思いながら、ルシアはスキップをするように歩いていた。
「や、やめてよ!!」
「─────…」
不意に聞こえてきた幼い少年の声に、ルシアとマヤの足が止まる。
声の方へ顔をやると、幼い少年相手に、ガタイのいい男が何かをふんだくっているのが見えた。
「うるせぇなぁ、どうせ盗んだものだろうが!」
「違うよ…! 今日はお父さんが好きなもの買えって言ったから!」
「ばぁかいうな、お前んとこがどんだけ貧乏かは分かってんだ。そんな奴がこんないい肉を買えるわけねぇだろうが!」
ふんっと、男が踏ん張ったはずみで少年が飛ばされる。
周りも、身をすくめて関わりたくない、と言った様子で顔をそらしていた。