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† 姫と剣 †
第2章 成人の儀

キラキラと輝かしい会場の中、酒を飲み干した一人の男は、隣に佇む使いに空のグラスを差し出す。
それに反応した使いは、先程調達した酒の瓶を掴んでグラスの中へと注いだ。
「それで? いつルシア姫に会えるんだ」
「もうそろそろいらっしゃる、とか」
「さっきから、そればかりだな」
そう言いながら男は、また酒を飲み干す。
長い黒髪に、白い肌。
乱暴な物言いとは裏腹、女性的な整った顔立ちに青い瞳……
「ロイ王子、少し飲み過ぎです」
「姫も来ないんじゃ暇で飲むしかないだろう?」
片眉を上げてフッと笑ったこの男は…
ローハーグ王国から遥か南に位置するアノア王国の第3王子…
ロイ=セアナス=アノアである。
「遠路はるばる来る意味が果たしてあったのか…」
ボヤく主人の隣で、使いのセスはこれ以上ロイに酒を与えまいと、瓶を見えないところへと置く。
「資源豊かなローハーグは各国が狙う国。その魅力は資源に留まらず、強大で圧倒的と名高い戦力。そんなローハーグと親交を深めることは我がアノア王国の未来の───」
「───つまらん」
セスの言葉をその一言で一掃すると、ロイはその長い髪をかき上げた。
華麗なその姿に、先ほどから周りの女そして男までもがチラチラと目を向けている。
「そんなに大切な国だというなら父上ご自身、あるいは兄上が出向かわれれば良かったのでは……?」
「それは……その…」
「妃のいない俺を行かせることに意味がある…か。なんとも分かりやすい」
ロイはそう言いながら、再び空になったグラスをセスに向けていた。

