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† 姫と剣 †
第2章 成人の儀



各国の要人に、同じ挨拶をしながらルシアは息苦しさを感じていた。


皆親切に声を掛けてくるが、裏ではもっと腹黒いことを考えているのが目に見えて分かる。


誰もルシア自身を見ていない。


ドレスの締め付けもあってか、段々と目の前が遠のいていく…



「姫────」



背後から、リューイの低い声が響いてルシアははっとして顔だけ後ろに向ける。



「少し休まれてはいかがですか」


「………リューイ…」


「顔色が悪いです」



何の気ない優しさが嬉しいのだが、それが護衛としてなのか、リューイ本人として発された言葉なのかが分からずもどかしい。



「大丈夫よ」


「………いや、休まれた方がいい」



半ば強引にリューイにそう言われ、小さく息を吐いたルシアは人々に向き直ってニコりと笑う。



「すみません、少し要を済ませて、またすぐ戻ります」



話し足りないとばかりに、皆は眉を下げる。


その中でリューイは人だかりを避けて道を作る。


その道を歩きながら、ルシアはふぅと息を吐いた。


道の先、バルコニーに通じる大きな窓が見える。


外の空気を吸わないと……ここは色々な立場の人の思惑で淀んでいる。


外に出られるその間際、フッと気を抜けたのと同時にルシアの体に蓄積された疲れがのしかかる。


体がふらついて、立て直そうとするが着慣れない重いドレスが足に絡まる。

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