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† 姫と剣 †
第2章 成人の儀


思うように体が動かない。


転んでしまう─────



「ルシア姫っ……」



後ろからリューイの慌てる声がしたのと同時に、横からひょこっと伸びた手がルシアの体を支えた。



「おっと……大丈夫か……?」


「……すみません…っ」



支えてくれた人物の方にルシアは顔を向けた。


長い黒髪に青い瞳。


女性……? いや、男性…だ。


服はゆったりとしたマントのような衣装に宝石が散りばめられている。



「ん………あんたは…」


「ルシア姫、お怪我は」



スッと後ろから現れたリューイは、その男からルシアの手を奪うようにしてルシアの体を支える。



「リューイ……だ、大丈夫。このお方が助けてくれて」


「────────…」



リューイは、すぐさまその男の方を警戒するようにして向き直った。



「ルシア…姫……。ほぅ、やはり、か」


「……あ、あの…」


「そちらから来るとはな。なんとまぁ手間が省けた」



飄々とした男の様子に、リューイは眉を顰め、背中に背負う剣のグリップを掴んだ。



「口の利き方に気を付けろ、無礼者」


「フッ…俺は転んだ姫を助けただけだぞ? 無礼なのは君じゃないか?」



ハッとしたルシアは、前に立ちはだかるリューイの腕を掴む。



「そ、そうよ。リューイ、助けていただいたんだから、落ち着いて」



立ち直った男は、緩く笑うと片手を胸に当ててルシアに軽く頭を下げた。


「私はここから遥か南の国、アノア王国の第3王子ロイ=セアナス=アノア───」


「アノア…王国…」



ロイはそう呟いたルシアの手を取りキスを落とした。


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