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† 姫と剣 †
第2章 成人の儀
スルスルと、他国の事を話すルシアに、ロイは目を軽く見開いた後、またニコリと微笑む。
「おっしゃる通りです。お詳しいですね」
「やっぱりそうなんですね!」
胸の前で手を合わせたルシアは、バルコニーの柵を掴んで遠くを見つめる。
「世界は……広いですね」
大国の、謎多き姫として様々な噂がとりまくルシアと接して、ロイは漠然と興味を抱いた。
幽閉されているという噂まであったくらいだ。過保護に育てられた、か弱き姫とロイは思っていたが印象が少しずつ崩れていく。
この僅かな時間でも話しぶりからして、相当知識が豊富で頭がキレることも想像がつく。
「いつかお持ちしますよ」
「いえいえ、いつか、私の方から出向きます」
「─────────…」
星空の下、ルシアの微笑みに、ロイの胸がくすぐられる。
そして何の気無しにルシアに手を伸ばしたところで、リューイがそれを阻むようにしてルシアとロイの間に入り込んだ。
「ルシア姫、具合はいかがですか」
「……大分いいわ」
「では、中に戻りましょう。あまり夜風に当たりすぎるのも返って良くないかと」
リューイの言葉に、ルシアはギュッと唇をつぐむ。
そして、首を縦に振ったルシアは、ロイの方を見つめた。
「では、失礼いたします、ロイ王子。助けて下さっただけでなく、お話にお付き合いくださってありがとうございます」
軽く頭を下がるルシアの背後に佇むリューイの方をロイは見る。
その瞳の奥で静かに燃えているものを感じ取ったロイは、軽く笑った後、すぐにルシアの方を見つめた。
「こちらこそ。また近々、必ずお会いしたく存じます。ルシア姫──」
頭を下げると、ロイの長い黒髪がサラりと肩から落ちる。
そして、ルシアはそのまま会場へと戻っていった。