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† 姫と剣 †
第1章 お忍び

投げ飛ばされた少年の目から涙が流れる。


7つくらいだろうか。


辛うじて立ち上がったが、服も土だらけで膝も擦りむけている。



「嘘じゃないっ……! お父さんが…!家族のために一生懸命貯めてくれてた大事なお金で……っ今日は……僕の誕生日だからっ…」



必死な少年を前に、肉を奪い取った大男が豪快に笑う。



「おい……またグレンか…?」


「あぁ……あんな幼い子からまた何か奪ったみたいだ」


「かわいそうに……よりにもよってグレンに捕まるだなんてねぇ…」



ルシアのそばで、こそこそと2人の街人が話している。


その言葉を聞いたルシアは2人に近付いた。



「あの、何かあったんです……?」



突然話しかけられて、街人は、ハッとして背筋を伸ばしたあと、そのまま少年と大男の方へと視線を向けた。




「あの男……グレンがまた隙をみて好き勝手してるんでさぁ」


「好き勝手……?」




あぁ、と言いながら、はぁとため息をついた。




「安心しろ、俺がちゃーーんと店に謝って返しておいてやる!」



グレンと呼ばれた大男はガハガハと笑うと、街人は、あー…と小さく声を上げた。



「あぁやって適当言って自分のものにするんだわ」


「え……? それって盗んでるってこと?」


「んん……まぁ簡単に言うとそうだね」



眉を寄せたルシアは、その話をしてくれた男にさらに詰め寄る。

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