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† 姫と剣 †
第3章 決闘


「姫は確か…」


「妹が1人、です。かわいらしい顔立ちなんですけどおませで、結構辛辣なんですよ」



ふふふと笑うルシアを見て、ロイも微笑む。


聡明で、強く、それでいて女性らしいしなやかさも持ち合わせている。


ふと茂みに咲いている一輪の白い花に気付いたロイは、それを摘み上げる。



「ロイ王子……?」


「我が国アノアにも咲く花───」



その一輪を見つめたロイは自身の胸の高鳴りをまるでその花に宿すようにして大切に掴む。



「凛と力強く咲く様はあなたにとても似合いますね」



差し出された花は、そのままルシアの耳へと掛けられる。


甘い囁きに、優しい声音。


青い瞳の眼差しがルシアに向けられる。



「また今夜もお会いできますか?」


「今夜…ですか」


「ええ」



静かに迫る波のように、勢いのあるロイに、ルシアは困惑して言い淀む。



「我が国名物の酒を持ってきておりましてね。良ければご一緒に」


「お酒、ですか……。あまり飲んだ事がなくて」


「一口くらいなら大丈夫ですよ」


「あの……でも…」


「では、また夜に伺います」




ルシアの返事を聞く事なくロイはそう言って笑うと、ルシアの手を掴んで再びキスを落とす。


絵になるその様に、思わずぼうっとしていると背後から「ルシア姫」と呼ばれて我に返った。



「そろそろお時間です。お戻りください」


「また君か……空気が読めないね」



跪くリューイにロイは戯けた様子でそういったあと、ルシアに向き直って、ではと微笑み、その場から消えていった。



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