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† 姫と剣 †
第1章 お忍び

「だ、だったら! なぜ皆助けないのですか!」
正論を叩きつけたルシアに、街人は目を丸くした後に俯いた。
「そりゃあ今度自分が標的にされちゃあたまったもんじゃないからねえ」
「………そ、ん…な………」
周りはグレンが悪いことは分かりきっている。
その理不尽な状況でも、誰も動こうとはしない。
堪らずに唇をぎゅっと噛み締めたルシアをマヤは横目で見た。
「ルシアさま……いきましょう」
「だめよ」
「へ……?」
深緑の瞳は真っ直ぐとその状況を捉えている。
マヤがまずい……と思った時はもう遅い。
ルシアは、「ちょっと……!」と大きな声を上げながら、走ってグレンの元へと向かった。
「あ?」
「いい加減にしなさい!!」
ルシアは少年の前に立って匿うと、怯むことなく大男のグレンを見上げた。
「なんだぁ…? 見ねぇ顔だな?」
「それはこの子のものでしょう! 返しなさい!」
ルシアの勇敢な姿勢に、目を逸らしていた周りが一気に注目する。
マヤはその人々に揉まれてしまっている上に、ルシアの本を数冊抱えているせいでうまく動くことができない。
「お前、俺に話してんのかぁ…?」
果敢にも挑んできたルシアを見て、グレンはフッと笑った。

