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† 姫と剣 †
第3章 決闘


時計をチラと確認するが、まだ約束の時間まで十数分ある。




「すみません、待ちきれなくて早く来てしまいました」


「あ、い、いえ、こちらこそすみません! すぐ向かいますね。マヤ、ロイ王子を広間へ」



ロイの美貌に腰を抜かしぱくぱくと口を動かしたままのマヤにそう指示をすると、ロイはさらに部屋の中へ入ってルシアに顔を近付けた。



「ここじゃ……ダメ…ですか?」


「え……?」



ロイの問い掛けに扉の外にいたリューイが眉を顰める。




「どういう意味です……?」


「広間は…きっと給仕やら何やら人が多いのでは……?」


「それは……まぁ…」


「だったら、この部屋で2人きり、ゆっくりとお話できる方が私はいいのですが」




ロイは、昼間に上げた花が飾られているのを目にして、わぁと声を上げる。



「ですが…、ロイ王子は大切なお客様ですから。こんな私の部屋などでおもてなしするだなんて」


「何をおっしゃいますか。この私が望んでいるのです」




積極的な主人を見て、ロイの付き人であるセスは背後で目を見開いていた。


ロイがこのような姿を見せるのは珍しい。


ローハーグに向かうときの不機嫌な様とは打って変わって、昨晩からかなり上機嫌なロイにセスは気味悪さすら感じていた。



「で、も……」


「ルシア様! 私、お料理など諸々この部屋に運ばせますから!」


「え…ちょっ…マヤっ…」



戸惑うルシアをマヤはキッと強く睨みつける。

そして、ルシアの耳元に近付いてルシア様!と小さな声で囁いた。
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