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† 姫と剣 †
第3章 決闘

「もしかして……アノア王国の民が崇める神…」
「さすが。おっしゃる通りです」
「豊作の神ティーファの瞳は、夏に生い茂る葉の如く緑に輝く……」
昔読んだ書物を思い出しながら、ルシアがそう言葉を続ける。
「そうです。ですから、ルシア姫は、我が国では大変縁起の良い、貴重なお方」
さらに顔を近付けてくるロイに、ルシアは誤魔化すようにして酒の入ったグラスに口を付ける。
それに構わず、ロイはルシアの髪を一束掴んだ。
「ちなみに黄金の髪もアノアでは珍しく希少です」
「…………ロイ王子こそ」
ルシアにじっと見つめ返されてロイは、トクンと胸が高鳴るのを感じた。
「真っ青な瞳に、漆黒の髪…。この国では珍しいですよ」
「そうですか」
「先程いた私の使いのマヤも、ロイ王子があんまり素敵だから、腑抜けてましたし」
マヤのメロメロな状態を思い出して、ルシアは口元を手で隠しながらフッと笑う。
酒が回ったのか、少しだけ体がふわふわとしてきている。
部屋の照明がぼやけて見えて、ルシアは軽く目を擦ると、ロイはこの手を掴んでルシアに迫った。
「あなたは………?」
「ロイ……王子…?」
「私のことをどう思われていますか?」
耳元で囁かれて、ルシアは小さく体を震わせた。

