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† 姫と剣 †
第1章 お忍び

「そうよ!あなた以外にいないでしょ」
「誰だかしらねぇが、こいつが盗んだものを俺は返してやろうとしてるだけだぜ?」
「だからそれは盗んだものじゃないよ!!」
ルシアの後ろで少年が顔を出して再びそう主張すると、グレンはうるせぇ!!と怒鳴った。
「違うって言っているんだから…今からお店まで行って確認取りましょう? それならあなたも信じるでしょ?」
ルシアの至極真っ当な申し出に、グレンはギリと奥歯を噛む。
そして、顔を赤くすると、拳を握って振りかぶった。
「黙れこのアマ……!!」
容赦なく降りかかってきそうな拳を見つめて、ルシアは反射的に腰にかかるものを掴む。
いや、でもいけない。
こんな悪人だって、一応は国の民────
斬りつけはせずに隙をついてかわしてどうにか…
いや、でも今かわしたら、後ろにいる男の子が危ないかもしれない。
余計にあれこれ考えていたせいで、もうそこまで差し迫る攻撃に、ルシアは後ろ少年の抱き抱えてうずくまる。
そして覚悟して身を固めていると、逆に「いってぇえ!!」とグレンの大きな声が聞こえてきて、ルシアは背後を振り返った。
「─────何をしている、グレン」
後ろに縛られている亜麻色の髪がなびく。
その男の前で、グレンが振り下ろしていた拳を掴みながらうずくまっていた。

