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† 姫と剣 †
第5章 来賓
背中に背負われた剣が、ゆっくりと抜かれる。
目を瞑って、静かに息を吐いたリューイは、静かさの中、カッと目を見開いて剣を振り下ろし空気を切る。
完璧な身のこなしに、滴る汗。
あまりに綺麗なその動きにルシアは思わず見惚れていると、シャロンが肩をすくめた。
「……病み上がりであんなことしていいのかしら」
「ほんと…ね。体が疼いて仕方なかったんでしょうけど…」
リューイのことをじっと見たまま言葉を返す姉を見て、シャロンはまた肩をすくめた。
「お姉さまはああいうのがタイプなのね」
「えっ……」
「さっき摘んでたお花も、彼のお部屋に飾ろうとしていたんでしょ?」
ズバズバと言い当てる妹にルシアは顔を引き攣らせ、マヤはプッと吹き出して笑った。
「私だったら、もっと楽しくお話できる方のほうがいいけどなぁ」
「実は私も、なぜルシア様はリューイなんかをって思ってたんですよね」
「りゅっ…リューイだって話くらい……」
思わずフォローすると、シャロンは目を細めてルシアを見た。
「本当ですか?」
「……────」
問い掛けに今までの会話を思い起こす。
もちろんこの場所ではロクな会話はして来なかったかもしれない。
でも、街では……
…やはり……あまり言葉は交わさなかったかもしれない
思い返すと、シャロンが言う通り、リューイと会話らしい会話をしたことがないことに気が付いて、そのまま少し俯いた。
「……言葉は…いらないのよね」
もちろん、言葉が欲しい時もある。
でもリューイとはそれ以上の何かがあるとルシアは感じていた。