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ハニードロップ
第2章 本物
「俺、奈子ちゃんのこと大事にするよ?ねぇ、だからお願い。俺のこと好きになって」
「そんな、私、三木村さんに大事にされる価値ないです。だって三木村さんは大人気の俳優さんで、そんな人がまさか私を好きだなんて……」
「俺、俳優の前に男だよ。奈子ちゃんのこと大好きな、ただの男」
「……っ」
ようやく、気付いた。三木村さんの悲しそうな顔を見て、ようやく。
三木村さんは人気俳優だからと決め付けて、三木村さん自身を見ようとしなかったのは私だった。この人は本当に、セックスした人の名前を忘れるような人?あんなに愛しげに、何度も可愛いと囁きながら名前を呼んでくれたのに。
あんなに必死で私を求めてくれたのに、私のことを軽いと見下すような人?
動けない私が眠りやすいように体を拭いたりシーツを取り替えてくれたりした人が、本当に私を置き去りにする?
「ごめんなさい……」
私はとても失礼なことを思っていた。まだ三木村さんのこと、ちゃんと知らない。テレビの中で誰よりも輝いていて、優しくて、甘くて、ちょっとえっち。そんなことしか。でも私に向けられた優しさは、全部全部本物だった。それは分かるから。