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桃衣の天使
第1章 桃色の天井
 「はじめまして横川当麻さん。外科の笹本祐子です。」
 「交通事故ですか?」
 掠れ声での第一声に笹本先生は朗らかに笑う。
 「はい。異世界転生はしてませんよ。」
 心の声が漏れていた?自由に動く目をぱちくりしてると種明かし。
 「鞄にラノベいっぱい入ってましたよ。」
 納得。だがそれはそれで恥ずかしい。
 「後で警察からも説明があるでしょうが」
 と前置きして笹本先生は経緯を話してくれた。
 
 「小学生」「赤信号」「車のクラクション」で反射的に身体が動き小学生を突き飛ばした俺は車にはねられ実に十m近く宙を舞ったそうだ。全身打撲で両足右腕の骨折。これで右耳もやられていたら史上最強の美女と同じだったのにと思ったのは古いアメリカドラマ好きの母さんの影響だ。
 頭も打っていたので緊急手術に検査に入院と色々あってあれから既に四日経ってるそうだ。その間一度心臓が止まったそうだ。まあ、覚えてないし一度死んだくらいじゃ人生観なんて変わらないようだ。
 小学生は膝を擦りむいただけで無事だったらしい。それはなによりだ。問題はその小学生の祖父というのが中坊の俺でも知ってる大会社の会長さんで搬送手術してくれた市民病院になぞ入れておけるかと強引に転院させた先が今居る「愛和総合病院」だ。ここはスタッフの技術も一流なら費用も一流。スキャンダルに困った政治家や芸能人が急病になって緊急入院することで有名な病院。とても母子家庭の俺が居れる場所ではない。慌てて再転院を申し出ると全費用は会長が負担し、しかも事故を起こした運転手からは多額の慰謝料を取ってくれるらしい。有り難いが畏れ多い。笹本先生曰く金持ちが自分の懐が痛まない程度の出費しかしてないのだから気にするな。だそうだが気にはなる。お金は返せそうにないが会う機会があったら丁寧にお礼だけは言わなければ。
 図らずも他人より一足早い夏休みに突入する事になってしまった。利き腕が使えない事もあって夏休みの宿題は各教科スマホを使ったレポートの提出で許して貰える事になったそうだ。これはクラスメート達が挙って先生達に談判してくれた結果らしい。ありがたや、ありがたや。一学期が終わっても未だ半数顔と名前が一致しない級友達に心の中で手を合わせる。
 「今夜一晩様子を看て問題なければ一般病棟に移ります。担当医は私笹本になります。担当看護師は。」
 「高樹千歳です。」

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